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債券
高ボラティリティ局面における投資適格社債
ピーター・ ベッカー
インベストメント・ディレクター
キーポイント
  • 投資適格社債市場は年初来の大幅下落でエントリーポイントとして魅力的な水準
  • 利回り上昇でインカム収入が増加しトータルリターンの下支えとなる可能性
  • 下方リスクは依然として残り、銘柄選択が重要

はじめに


投資適格社債市場は2022年初から低迷しており、上半期のトータルリターンと超過リターンはいずれも大幅なマイナスとなりました。デュレーションの長い債券主導の下落は、高インフレ、ウクライナ紛争、金融引き締めなどのマクロ面の逆風によって拍車がかかりました。一部のリスクは緩和されつつあるとはいえ、スプレッド拡大と利回り上昇が急激に進行しました。投資適格社債には強気の見通しを持っており、直近のバリュエーションはエントリーポイントとして魅力的な水準にあると考えますが、リスク資産全体でボラティリティが急上昇し、先行きの不確実性が残るため依然として注意が必要です。現在の環境では、引き続き銘柄選択が重要であり、魅力的な相対価値の機会を特定するためにはアクティブ運用のアプローチが有効であると考えます。


リスクに見合ったリターン


高インフレ、金融引き締め、マクロ経済全体のボラティリティの高まりを背景に、2022年上半期のグローバル投資適格社債は大幅下落となりました*[1]。多くのリスクは既に市場に織り込まれているとみられます。特にFRB (米連邦準備制度理事会) の利上げに対する市場予想はすでに年初から大きく変化しており、2023年1-3月期末のFF (フェデラル・ファンド) レートの市場予想は、年初は1.5%近辺でしたが、直近では4%程度まで上昇しています*[2]


今後も、マクロ経済要因、特にインフレとそれに対する政策対応が市場全体の方向性を左右する公算が大きく、投資家のリスク選好に影響を与えかねない不確実性が依然として残っています。景気拡大期の後半に入ることで、スプレッドが一段と拡大する可能性があります。景気後退やスタグフレーションに陥るリスクが簡単に払拭されることはなく、いずれも投資適格社債市場に悪影響を及ぼすとみられます。世界的に景気は明らかに減速しており、ウクライナ紛争の長期化など、さらなる重石となり得る要因も多くあります。ウクライナ紛争の影響は特に欧州で深刻化するとの見方から景気後退懸念が高まっているにもかかわらず、これまでのところ欧州景気は比較的持ちこたえています。


労働市場の逼迫、ウクライナ紛争、世界的なサプライチェーン問題の長期化によってインフレ率も予想を上回る水準で推移しており、リスクセンチメントも脆弱です。このままインフレ率の高止まりが続く場合、中央銀行はインフレ抑制と成長維持を両立させるという非常に難しい舵取りを迫られることになります。中央銀行が現在の市場予想よりも積極的に金融引き締めを実施する可能性もあります。中国のゼロコロナ政策、ウクライナ紛争、それらに起因する景気やインフレ、サプライチェーンへの悪影響など、グローバルには他にも多くのスプレッド拡大要因があります。したがって、市場のボラティリティは高止まりする可能性があります。


ただし、全体的なリスク・リターン特性は改善しているように見えます。次のグラフに示すように景気後退期以外の局面では、景気後退期に比べて金融環境のタイト化によるスプレッド拡大が全般に限定的であることにも注目すべきです。


*[1] 2022年6月末現在。ブルームバーグ・グローバル総合社債指数(米ドル建て、ヘッジなし) 。出所:ブルームバーグ


*[2] 2022年6月16日現在。出所:ブルームバーグ



ピーター・ベッカー  インベストメント・ディレクター。経験年数26年。入社以前は、アバディーン・アセット・マネジメントにおいてポートフォリオ・マネジャー、ウエリントン・マネージメントの債券プロダクト・マネジメント・チームにおいてマネジング・ディレクターとして勤務。CFA協会認定証券アナリスト。


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